社長はお隣の幼馴染を溺愛している
「倉地さんと社長、二人とも同じ香水使ってるんですね。いい香りがしますけど、どこの香水ですか?」
「ああ、それなら、倉地さんが知っているんじゃないかな」

 社内の人間が見たことない要人の好青年風の笑顔。その笑顔、不吉すぎた。
 笑顔で場が和むはずが、さらに空気が重たくなった。
 要人がなんの香水を使ってるか、私は知らない。
 この二人、絶対似た者同士。
 答えられない私を楽しそうに眺めている。

「扇田さん。お昼休み、終わっちゃうから、食事させてもらっていいですか?」
「え? ええ……」

 恵衣は機嫌よく、残り半分のチキンカツを口に運ぶ。
 要人と愛弓さんは、二人で社食から出ていったけど、服の香りが気になって、二人を気にするどころではなかった。
< 67 / 171 >

この作品をシェア

pagetop