社長はお隣の幼馴染を溺愛している
「俺は志茉の隣にいる。だから、いつでも頼れ」
「要人……ありがとう……」
 
 志茉を失わないために、幼馴染のふりをするしかなくなった。
 抱いてしまったら、二度と幼馴染に戻れないとわかっていた。
 わかっていたはずが、あの時、志茉を抱かなかったら、どこか遠くに行ってしまいそうな気がした。

 ――手に入れたつもりが、俺から奪う理由を与えた。

 志茉は俺が今までどおり隣にいるとわかり、安心したのか、少し溶けてしまったアイスクリームを口にする。
 やっと食べられるようになった志茉の心をこれ以上、苦しめたくなかった。
 志茉は悪くない。
 
 ――俺が悪い。

 これは、さんざん傷ついていた志茉に、またひとつ傷をつけた罰。

「仁礼木には戻るけど、毎日会いに来るからな」
「うん……」

 志茉の細い指に自分の指を絡めて、手を繋いだ。
 眩しい夕焼けの光が、荒れた庭を照らしていた。
 本当の家族になるには早すぎて、恋人になるには難しい。
 幼馴染に戻るのが、俺たちが離れずに済む唯一の選択肢だった。
 
 ◇◇◇◇◇
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