世話好き女子がクーデレ男子を愛育した結果




 あかりはドアロックをしたまま声を掛けた相手がピクリとも動かないことを心配し、自分も扉の外に何とか出た。


 そして、総一郎の顔を覗き込み、前に一度だけ、エントランスで会ったことがあることに気付く。あかりは記憶力がいい。


 そして警戒心を解き、あかりが思ったこと。それは────。



「神様がくれた、お世話チャンス……?」



 あかりは口元を両手で抑え、はわわと目をキラキラさせる。それは違う。


 けれど、総一郎の母の思惑通り、総一郎は運が良いのか悪いのか、あかりの部屋の前に辿り着いた。困っている時に、助けてくれそうな人の元に。


 というより、お世話してくれそうな人の元に。


 あかりはよいしょと総一郎の肩を支え、何とか立たせる。とても重い。けど、あかりはこのチャンスを絶対、何としても逃したくはなかった。



「大丈夫っ! 今おせ……助けるからっ」



 あかりの口はとても素直だった。出掛かった言葉をなんとか飲み込む。そしてそのまま総一郎は意識がほぼないまま、あかりの自宅へと引き込まれた。





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