世話好き女子がクーデレ男子を愛育した結果




「ヒェッ!……総一郎くん?」
「……撫でていい? よしよしって」
「ええ……えーと、私がするんじゃないダメ? さっき髪の毛乾かしてくれたし」
「俺がしたい」
「駄々っ子だなぁ〜……特別だよ?」



 あかりは総一郎に向き直り、頭を突き出す。総一郎はその頭をよしよしと満足するまで撫でてみた。


 頭の形がまん丸でで小さくてバレーボールみたいだな、と勝手に思う。グッときた。


 あかりと一緒にいると、優しくて温かい気持ちにしてもらえていた。


 なのに、今日聞いたあかりの過去は、総一郎の胸に魚の小骨のように引っ掛かっている。


 あかりは無心で撫でくりまわす総一郎の両手を掴み、ちょっとだけ頬を赤くして口をへの字にしている。



「これ以上は追加料金取ります。大人しく寝てください」
「……はぁ、あかりかわいい」
「ハイハイ」



 またもや総一郎のあかりかわいいを受け流し、横を通り過ぎるあかりに、総一郎はもやもやしながら思う。


 あかりはお世話好きな反面、人を頼るのが下手だ。なんでも自分のことは自分で収めようとする。けど……。

 

 ────今まであかりが悲しい時、大変な時、気付いてくれて、支えてくれる人はいた?


 

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