世話好き女子がクーデレ男子を愛育した結果



 壁にもたれさせ、あかりはサラリーマンのワイシャツのネクタイを外し、首元を緩める。


「ごめんなさい、こうした方が少しでも楽になるから」
「……ありがとう」
「意識、ちゃんとしてますね。よかった」



 あかりはホッと胸を撫で下ろし、にこりと微笑みながらサラリーマンの顔を覗き込む。サラリーマンはその笑みを見て、目をまん丸にした。



「これ、良かったら。冷たいから飲んでくださいね。落ち着くまで休んでから動いた方がいいですよ」
「……あの、名前は」
「わ! 学校遅刻しちゃう! それじゃあ、気を付けて!」
「あっ……」



 ペットボトルのスポーツドリンクをサラリーマンの手に握らせると、あかりは自転車に跨りその場から走り出す。


 あかりは無遅刻無欠席、皆勤賞を目指しているから必死だ。


 そんなあかりの後ろ姿を、サラリーマンは呆然と見つめていた。



「あの、制服────」




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