もふもふになっちゃった私ののんびり生活 ~番外編

 そんな様子を日々見ていると、私が守らなければ!という意識がどんどんと芽生えていき、精霊化の進みも早まりました。

 とりわけ、麓の家から一生懸命に布を運んで来た時など、布に足をとられて何度も何度も丘を転がり、そしてやっと到着したと思ったら人化し、幼子の姿でその布を頭からかぶって身に着けて私の根元を登り出した時など、ハラハラしながら見守っていました。
 それなのにやはり、幼子の身長よりも高い私の根を這うように登っていたルリィは、何故か途中で立ち上がろうとし、あっと思った時には滑って転がり落ちて行きました。

 さすがに毎日何度も転がっているからか、転がるのに慣れているのか頭を打つことなく身体を丸めて衝撃を逃がし、そのまま二回転した時には拍手したくなりました。
 私は魔力で人の営みの様子を見守って来ましたが、人の行動の意味がルリィを見ているとなんとなく理解できるようになって来たのです。

 「フウ……」とため息をついたルリィが、立ち上がりトテトテと覚束ない足取りで近づき、また私の根に登り始めた時には「止めて下さい!また転がりますよ!」と叫びたくなったものです。

 それから何年もテチテチ歩き、コロコロ転がるルリィを見守り続け、決して言葉に出さなくても一人で寂しいと思っていることには気づいていました。
 だから精霊化を急いでいたあの日、初めて結界に雨が降ったのです。


 あの時、どうしても声をルリィに届けたくて、ずっと傍で見守っていることを知って欲しくて、必死で足掻いて気づくと精霊化をしていました。
 まだ時間が足りず、言葉を紡ぐのにもたどたどしく、ほんの少しの時間しか実体化もできずないことにもどかしく感じましたが、ルリィの笑顔を見ればそんな想いも霧散しました。

 だから、ルリィがその生を終えて何千年と一人孤独にこの地に残されようとも、私が精霊としての自我を得たことへの後悔は全くありません。
 これからのルリィとの時間を思えば、それくらいはどうということもありませんしね!

 だから、ルリィと二人での幸せな日々にお邪魔虫の陰が早速纏わりついているのが少しだけ、そう少しだけ心がざわついたので、街へ行くまでの時間を二人きりで過ごしたのは意地悪でもなんでもないと思うのです。

 ルリィ。貴方の笑顔は私に感情をくれました。だからいつまでも笑っていて下さい。




 
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ファンタジー124ページ

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 所謂ブラック企業に勤めて早八年。気づくと三十になっていた。  毎日朝起きて電車に乗って会社へ行き、毎日終電で帰り休日も休日出勤。  もう疲れ果てて気づいた時には、フラフラと赤信号の横断歩道へ倒れ込んでいた。  そしてぼんやりと滲む視界に飛び込んで来る車のライトに。 『ああ……。車の運転手さん、ごめんなさい。悪いのは、全て倒れた私と過労な労働をさせていた会社だから。どうか、運転手さんが悪くなりませんように』  そう最後に思いながら、衝撃と痛みを感じることなく意識が遠のいていき ……  そうして目を開けるとそこは真っ白な世界で。当たり前のように目の前にいた女神様にお約束のように転生させてくれると言われて望んだら。 『ええっ!!私、もふもふを愛でながらのんびりスローライフが出来たら何でもいいです、って言ったのに!なんで私がもふもふになっているの!!』  ……まあ、これもお約束、なのか?  もふもふになったアラサーOLの異世界のスローライフはどうなる! **この作品はアルファポリスさんに投稿した『もふもふになった私のもふもふ生活』(本文完結済)を改題、改稿加筆したものです** 第二回ファンタジー小説大賞で大賞を受賞させていただき、9/5日に改題し、 『もふもふになっちゃった幼女薬師ののんびり異世界生活~最強の加護を受けているので二度目の人生は無敵です~』(イラストレーターさんは にもし様 です!) として発売いたしました! 作家名は、他社で書籍化した時の作家名に合わせ、 カナデ となっております。 本文は大分改稿していますので、是非!書籍の方をお手にとって下さるとうれしいです。 どうぞよろしくお願いします。 また短編の番外編 『もふもふになっちゃった私ののんびり生活~番外編』 を別で投稿しておりますので、そちらもどうぞよろしくお願いします。

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