もふもふになっちゃった私ののんびり生活 ~番外編

「はい。この野菜、どんな味ですか?」
「これはモロっていって、ほんのり甘くてプチプチした食感が面白い野菜だよ。食べる部分が少ない割に重いけど、買って行くかい?」

 モロでほんのり甘いって、微妙にトウモロコシとかぶってない?見た目と味が前世と同じような野菜もあるし、ここは試してみたいよね!

「はいっ!あの、二本だけでもいいですか?重いなら、それ以上は運べ無さそうなので」

 野菜は基本籠売りとかだけど、バラ売りしてくれるかな?

「ああ、バラ売りは構わないが……そっちの大きいのに運んで貰えばいいんじゃないのか?」
「大きいの?ああ、ヴィクトルさんですか?あの、家まで送って貰っていないので、自分で持てる分だけにします!」
「「「「「……ほおお?」」」」」

 ん?今、なんか声が重なったよね?なんか目の前のおじさん達以外からも聞こえたような……?

 んん?と首を傾げつつ周囲を見回していたら、「ちょっとこれでも食べて待っててな」と言って売り物の小さい果実を一つ渡され、そのままおじさん達五人全員でヴィクトルさんの方へ行ってしまった。

「え?いや、お金っ!」

 なんだかよくわからないけど、ただで貰えないよ!!売り物だしっ!!

 どうしようとキョロキョロしていると、いつの間にか他の店の人からもあれこれ「これも食べな」と渡され、ええええ!ど、どうしたら!と人に囲まれつつ頭を撫でられたりしていると。しばらくしてやっとヴィクトルさんと八百屋さんの旦那さん達が戻って来た。

「あの、お金、払います!」
「おお?ああ、今、そっちの大きいのから貰ったから、モロも大袋で持って行ってくれ。実の部分を切って干せば日持ちするからな!」

 どうしてそんなことになっているの!とあたふたしている内に、ヴィクトルさんの両手には様々な荷物が増えていったのだった。


 その後も、何故か「ルリィちゃんはいい子だね」とか「かわいいけど、気を付けないとダメだよ」とか声を掛けられながら、しばらく何人もの人に入れ替わり立ち替わり頭を撫で回されてしまった。


 その帰り道にヴィクトルさんに何があったか聞いても、「ああ」とか「まあ」とか曖昧な答えしか返して貰えず、荷物についても、「これはいいから何も聞かずに貰ってくれ」としか言われず。

 結局荷物は私が結界の中へ入れて、何往復かして運ぶことになってしまった。
 たくさん気になっていたけど買えなかったのがあってうれしかったが運ぶのが大変で、何度もあの辺りに買い物に行っているのに、なんで今日はあんなことになったのか、と考えてしまったのだった。


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