離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く

　そこまで言って唯はビールのジョッキを手に取ってごくごく飲むと、音を立ててそれをテーブルに置いた。

「まずは和歌の話よ。慶次さんといったいどうなってるのよ？　離婚ってなに？」

「そう、わたしも話を聞いてほしくて」

　これまで慶次さんとのあれこれは、仲の良い唯にも話していないことがあった。けれどもう自分ひとりで解決するのが難しくなってきて、わたしは洗いざらい彼女に相談した。

「多分慶次さん、他に好きな人がいる」

「なにー！　許さんっ！」

　声を荒らげた唯が、テーブルをこぶしでドンッと叩いた。

「いいからちょっと、落ち着いて」

　ひと言話すたびに唯が声をあげるので、いちいち落ち着かせるのが大変だ。

「その慶次さんに好きな人がいるっていうのは本当なの？」

「それは……間違いないと思う。わたし聞いちゃったんだ。秘書の七尾さんと慶次さんの会話。わたしのことちゃんとしてって七尾さんが慶次さんにお願いしているのを」

「はぁ？　許さない！　わたしの和歌をなんだと思ってるの？」