離婚するはずが、極上社長はお見合い妻に滾る愛を貫く
 わたしは簿記二級の資格を持っていたことから、主に経理、総務事務を行うことになった。わたしに仕事を教えてくれるのは入社二年目の井上(いのうえ)さん。ひとつひとつ丁寧に優しく教えてくれたけれど、正直覚えることが多すぎてメモを取っても理解できていない。

「心配しないで、みんな最初はそんなものだから」

「そうなんですか?」

 でもわたしは一年後、自分が井上さんほど仕事ができるようになっているとは思えなかった。

「大丈夫、一番大事なのは相談すること。失敗はね、誰にでもあるから」

「はい。ご迷惑をおかけしますが、よろしくお願いいたします」

 深々と頭を下げながら、わたしは気合いを入れ直した。



「はぁああああ。疲れた」

 買ってきたコンビニの袋をローテーブルの上に置くと、そのままソファにダイブした。

 入社後一週間。まだまだ知らないことだらけ。失敗しないように一日中気を張っているので、帰宅する頃にはくたくただ。

 働くって本当に大変なんだな……。

 慶次さんって社長さんなんだよね。しかもうちの会社よりも数倍大きいっていうことは、仕事の量だって半端ないはず。それなのにいつも疲れた顔ひとつ見せずに働いていたっけ。

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