シングルマザー・イン・NYC

サロンの内装は、極力、美容室らしくないように設えた。

カットやセットに使う椅子は高級な革張りのもの。

窓際にはゆったりと寛げる大きなソファ。
そして出窓にはクリスタルの大きな花瓶が置かれ、毎週フローリストがお花を活けに来てくれる。

数種類のグリーンだけの時もあれば、色とりどりの薔薇、何種類もの花を合わせたり――など、毎回工夫を凝らしてくれ、お客様も楽しんでくれる。もちろんアレックスと私もだ。

今週は淡い黄色のチューリップが数十本、豪華に飾られていて、お客様のほとんど全員が来店直後に「きれいね!」と喜んでくれた。

アレックスと私はサロン・ローゼンタールの共同店長だが、オーナーであるカミーユさんに雇われている身で、お給料は月給制。

それに加え、各自がお客様から頂くチップ(料金の20%~30%)が収入となる。

基本的な勤務時間は、午前10時から午後6時まで。
プライベートサロンなので、お客様は紹介制だ。

カミーユさんの友人知人、親戚がほとんどで、彼らに快適なサービスを提供するために、一日の予約は多くても十人程度。

その代わり、休日でも早朝に予約があれば対応するし、予約なしでも、ちょっとしたスタイリングであればその場で応じる。
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