シングルマザー・イン・NYC
キャンディーなど小さいお菓子を一つだけくれるお店もあれば、某ドーナツチェーン店とクッキーチェーン店は、売り物を一個。

私もつい食べたくなって、ドーナツを一個買ってしまった。

「楽しかったねえ、ハロウィン……」

慧は頬をピンクに上気させ、ほぅっとため息をついた。

「日本にもある?」

「日本のハロウィンは……どうかなあ」

「そうねえ……どっちかと言うと、お兄さんお姉さんが張り切るイベントかも……?」

「この国ほどは盛り上がらないと思う」

「……残念」

「あっ、でもお正月にお年玉っていうお金をもらえたり、夏には花火大会があったり、楽しいことはたくさんあるよ! 花火、きれいだよー。線香花火はすごくかわいいし」

里香ちゃんのナイスフォローに、私も続く。

「そうそう、おいしい食べ物もたくさんあるし。おばあちゃんちに泊まれるし。それに何より――」

「お父さんに会える!」

慧が満面の笑顔を見せた。

明日、私たちは篠田さんの待つ東京に向かう。

入籍とお互いの親への挨拶の他に、まずは二週間、三人で一緒に過ごして将来について話し合うことにしたのだ。

そして慧には、日本の色々を体験させてみる。

米国と日本の生活はかなり違うので、慧が日本に適応できそうかどうか、お試し期間というわけだ。
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