シングルマザー・イン・NYC
「三上総理って、樹さんの伯父さんだったんだ」

「政治家一族なんだ。世襲の政治家もどうかと思うけどね」

「樹さんは? 総理大臣になりたい?」

「――どうだろう。興味なくはないけど――向いてないかも」

そうだろうか。
樹さんほど優秀なら、なんにでもなれそうだけれど。

「希和はどうする、仕事? サロン・ローゼンタールを辞めるのはすごくもったいないと思うけど――帰国してこっちで働く?」

「うん。そうしたい」

「慧が日本に馴染んでくれるといいけど――難しそうだったら、俺は別居婚でもいい」

「――ほんとに?」

「そりゃもちろん、一緒にいたいけど。でも今までずっと離れていたことを思えば、『結婚』という確かな形を手に入れられて、たまに一緒に過ごせるだけでも奇跡」

「そうだね。でも私は、だからこそ、その奇跡を最大限に生かしたいと思ってしまうの。あなたとずっと一緒に――」

そこまで言うと、急に樹さんの腕に抱きしめられた。

眠ったままの慧はもちろん抱っこされたままで、親子三人がぎゅうっと、密着した瞬間だった。
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