シングルマザー・イン・NYC
私たちは急いで身支度を整え、マンション一階にあるタクシー乗り場で車に乗った。 

「お母さん、かわいいね。お父さんもかっこいい」

「ありがとう。慧も素敵よ」

私はシンプルなネイビーのワンピースにパールのネックレスを合わせた。

樹さんはダークグレーのスーツにサックスブルーのシャツ、濃紺のネクタイ。

スーツ姿の樹さんは端正で、少し近寄りがたい雰囲気を漂わせる。慧は、白いざっくりとしたニットにジーンズがかわいい。


「おばあちゃん!」

母は私たちの到着を家の前で待っていて、タクシーから降りた慧は、その腰に抱きついた。

「慧ちゃん、久しぶり! よく来たわねー」

母の目じりが下がる。だがその表情は、私の隣にいる樹さんを見ると固まった。

「希和、結婚相手ってまさか――大……臣」

ここに来る前に電話で、入籍したことは伝えたのだが、相手が樹さんであることは言いそびれていたのだ。

「篠田樹です。はじめまして。色々と順序がおかしくて申し訳ありません。希和さんとの結婚を許して頂きたいのですが」

樹さんが頭を下げると、

「ええ、もちろんです。娘と孫をよろしくお願いします」

母も深々と頭を下げたのだった。
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