シングルマザー・イン・NYC
「私も、お母さんとこんなふうに散歩するなんて思ってもみなかった」

「そうよね。NYに来ることになったのも、突然だったものね」

そう、東京で働いていた美容室がNY支店を出すというので、私はそのオープニングスタッフとして渡米したのだ。

もう三年――じきに四年になるのか。
早い。

お店は順調に軌道に乗り、当初予想されていたよりも現地のお客さんが多く来てくれるようになった。
日本人スタッフと米国人スタッフの関係も良好だし、カミーユさんのおかげで富裕層の顧客も増えた。

「希和はケイ・タカヤナギNY支店の功労者だ。産休後は必ず戻ってきてくれ」

店長のこの言葉は、ああ私は信頼されている、ちゃんと居場所画家確保されている、と励みになった。

当然、自分はいつものあの席に戻るのだと思っていた。

ところが――。
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