定期の王子様
でも、そいつは私が声を上げないからいい気になってるのか、ぴったりとついてきてまだ私のお尻をまさぐってる。
「……痴漢」
自分から出た声は酷く震えていたうえに、バスのアナウンスにかき消されてしまいそうなほど、か細かった。
「痴漢。
痴漢、が」
足ががくがく震えてて、しっかり手すりを掴んでないと崩れ落ちそう。
でも、必死に私が訴えてるっていうのに、あいつは黙って運転してるばかりで。
……やっぱり助けてくれないんだ。
だって性格悪いもん、この運転手。
期待した私が莫迦だった。
どうしようかな、次のバス停で降りようかな。
ぐるぐる悩みながら恐怖と戦っていると、バスは次のバス停に停まった。
けれど、ドアは開かない。
「お客様にお願いいたします。
本バス内、痴漢事件発生のため、しばらく停車いたします。
大変申し訳ございませんが、お急ぎのお客様は次のバスにお乗り換えください。
……っておっさん、逃がすと思ってんのかよ」
淡々と事務的にアナウンスをしていたあいつだったけれど、逃げようとドアの傍に迫っていた痴漢の腕を運転席から身を乗り出していきなり掴んだ。
「……痴漢」
自分から出た声は酷く震えていたうえに、バスのアナウンスにかき消されてしまいそうなほど、か細かった。
「痴漢。
痴漢、が」
足ががくがく震えてて、しっかり手すりを掴んでないと崩れ落ちそう。
でも、必死に私が訴えてるっていうのに、あいつは黙って運転してるばかりで。
……やっぱり助けてくれないんだ。
だって性格悪いもん、この運転手。
期待した私が莫迦だった。
どうしようかな、次のバス停で降りようかな。
ぐるぐる悩みながら恐怖と戦っていると、バスは次のバス停に停まった。
けれど、ドアは開かない。
「お客様にお願いいたします。
本バス内、痴漢事件発生のため、しばらく停車いたします。
大変申し訳ございませんが、お急ぎのお客様は次のバスにお乗り換えください。
……っておっさん、逃がすと思ってんのかよ」
淡々と事務的にアナウンスをしていたあいつだったけれど、逃げようとドアの傍に迫っていた痴漢の腕を運転席から身を乗り出していきなり掴んだ。