ひとつ屋根の下、憧れモテ王子は甘い愛を制御できない。


キョロキョロとあたりを見渡すと後ろに人の影が見えた。


知ってる。私、この人のこと───。


『こういうの、全部やめよう』


そうだ。広夢の声だ。
そっか。広夢もいなくなって、ママもいなくなって。


私、もう、一人ぼっちなんだ。


何もかもが怖くなって泣きながらギュッと目を瞑ったとき。


ふわっと。


最近覚えた匂いが鼻を掠めた。


学校の廊下でこの香りとすれ違うと、今日一日ハッピーな日だって笑顔になれる。


優しい香りによって自然と心が落ち着いていくような気がして。


「んっ……」


ゆっくりと重かった瞼が開いた。


はぁ……。嫌な夢を見てしまった。


昼寝は悪い夢を見ることが多いとどこかで聞いたことがあるけれど、ほんとその通りだ。


もう絶対に昼寝なんてしな────。


……え?


意識がだんだんとはっきりしていく中で、目の前にありえない光景が見えて息が止まった。


な……。


これは、一体……。

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