キミに一条の幸福を
 大体にして芽衣子はいつも部屋でパソコンと向き合っている文系なのだ。

 体育会系でもなければ体を動かすこともあまりしないのに、この石段は辛すぎる。


(ああもう! 本当に最近はついてない!)

 小説家を目指している芽衣子。

 webの小説大賞から、公募のものまで色々書いてきた。

 夢は学生作家だ。


 でも、だからこそ焦りもあるのかも知れない。


 特に最近は公募のものは一次選考で落ちたし、逆にwebの方は最終選考まで残ったのに何の賞も得られなかった。

 書籍化にまでは繋がらなかったが、何らかの賞を取ったことは二度ほどある。

 だから全く望みが無いわけでは無いはずだ。


 そう思うからこそ、最近の不甲斐なさに落ち込んでいた。


 しかもモチベーションも中々上がらず、次の公募に出すための作品の筆が進まない。

 パソコンの前に座り、ダラダラと時間だけが過ぎる日々。

 焦ってはダメだと分かっているのに、コントロールがきかない。


 そんな中でのこの疲労。

 何かに、誰かに当たりたくもなるというものだ。


 しかもさらに悪い事に、晴樹の言葉通りに雨が降ってきた。

「うそでしょ……」

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