エリート脳外科医は政略妻に愛の証を刻み込む
無資格の友里が扱うことはできないが、それがどういうものかは学んだ。

他にも、病棟で使う機器の名称や使い方を、必要な知識として頭にインプットしてある。

友里に声をかけられた看護師は、二十八歳の久保田(くぼた)という女性だ。

中背で細身。明るい茶髪の長い髪を、いつもヘアクリップで留めている。

彼女は半年ほど前に、他の看護師と一緒に友里の陰口を叩いていた人であるが、今では『友里ちゃん』と呼んで可愛がってくれるようになった。

一生懸命に頑張る友里の姿を見て、見直してくれたのかもしれない。

友里から手術患者の迎えを知らされた久保田は「もう? 予定より一時間も早い」と驚き、「執刀は香坂先生か。さすが」と納得している。

それから、「さすが。と言いたいけど、お迎えが早まると段取りが狂って、こっちはちょっと困るのよね……」と小声でぼやいていた。

雅樹の手術は、正確かつスピーディ。

友里は手術室に入らなくても、こういう場面を通じて、雅樹が凄腕の外科医であることを実感していた。

伝票の入力作業に戻ろうとしていた友里に、久保田がシリンジポンプを準備しながら頼みごとをする。

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