蒼月の約束
エルミアは砂の上に座りこんだ。

「大丈夫ですか…?」

心配そうに顔をのぞき込むリーシャにエルミアは言った。

「ちょっと時間ちょうだい」

〈やっと話を聞くようになったか〉

満足げな声を出して、ローワンは言った。

(うるさいからね。何か私に用なの?)

〈相変わらず無礼じゃ。助言して来てやったというのに〉

(助言?)

エルミアが話している間、リーシャたちは少し後ろに下がり様子を見守っていた。

〈全てに決着がつく時、お主の願いが叶えられるだろう。しかし救えるのは二人に一人じゃ〉

(どういうこと?私の願いって何?)

〈その時が来れば分かる。すでに戦いの火ぶたは切られたのじゃ〉

(待って、その戦い、私も巻き込まれるの?)

〈お主の大事な人も巻き込まれる〉

(どういうこと?私の大事な人って…)

〈最終的にどういう決断を出すにしろ、それがお主にとって正解だ〉


よく分からない言葉を残し、いきなりフクロウは大きな羽を広げた。


〈お主の魂は一つ。手に入れられるのは二つに一つだ〉

「一体、どういうことなの…?」

何一つ役立つ情報をくれなかったと思いながら、エルミアは気ままに飛び去ったローワンの後ろ姿を見送るしかなかった。


「なんと言っていたのでしょうか?」

まだ〈月の廻りを知る者〉と会話が出来ることが信じられないという顔をしているリーシャがエルミアに近づいた。


「…既に戦いの火ぶたが切られたって」

そして、リーシャの方を向いた。

「その戦いに私も、私の大事な人も…」

自分でそう言って、気づいた。


もしかして、王子が大変な目に遭うってこと…?


「ミアさま?」

青ざめた顔をしているエルミアを心配そうにリーシャたちは見つめた。

「ううん、大丈夫」

無理やり笑顔を作り、帰ろうと三人を促した。




〈救えるのは、二人に一人…〉




ローワンの声が頭の中でこだましていた。

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