蒼月の約束

今度こそ、朱音は目を覚ました。

全身にびっしょりと汗をかいている。
肩で荒く呼吸をしながらも、自分がまだ生きていることを実感する。

「夢か…」

人生で一番、怖い夢を見た。目をつむると未だに鮮明に思いだせるあの状況。

「水…」

悪夢を見たせいか、汗はびっしょりかいているし、喉はカラカラだ。
手探りで、メガネを探す。
メガネをしたまま、寝ていたようで、掛布団の下を手探りで探すとすぐに見つかった。

「少し、曲がっちゃったけど…。いっか」

そしてメガネをかけてから、今度は本物の悲鳴を上げた。

いつの間にか、知らない部屋にいる。
そして西洋の屋根に飾られているような石像のガーゴイルのオブジェが朱音を見つめていた。

なに、なに!なに!?

パニック状態に陥っている朱音はとにかくここから離れたいという一心で、ベッドから這い出すが、想像していたよりも高さがあったせいで、無様にも下に落ちる。

そしてちょうどそのタイミングで、悲鳴を聞きつけた人たちが、朱音の部屋をバタンと開けて入って来た。

「どうかされました?」

10人ほどのメイドたちが、ベッドから落ちている朱音を見て声を一瞬失ったようにみえた。

「あ…」


見知らぬ部屋。

そして知らない人たち。

とにかく今しがた起きていることに、過剰に反応してたくても、人生一の悪夢からの、恐怖のオブジェは大きな打撃を朱音に残していたため、声が出てこない。
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