幻想館-白雪姫-
少年と少女は二人の女性の行動を、じっと見つめていた。



少女は今にも泣き出しそうな表情で、館長さんの方を見た。



少年は少女の手を握ってあげた。


「言ってあげたいのですか?」


少女は頷いた。



「どのような結果になっても、それ以上の事はできません。
あなたの気持ちを伝えるだけです」



「ママは・・・可哀想な人・・・?」



「それは、あなたの気持ち次第です」



少女は頷いた。



少年は二人の会話に黙って耳を傾けていた。



そして少年はもっと傷ついていた。



彼は椅子の上で更に膝を抱え始めた。



静かに目を閉じ、母体に包まれたかのように。



しかし、安らぎの表情は長くは続かなった。



苦痛に歪む顔。


全身が赤く染まる。



かき出される痛み。



少年の呼吸は荒くなり、糸が切れたようにぷつりと止まった


館長さんは少年の体に触れた。



柔らかな光が少年を包み込む。



しばらくの間、その状態が続く。



傷だらけの体は次第に治癒される。

「どうなったの?」



「大丈夫です、少し眠らせてあげましょう」


少女は頷いた。
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