妹を溺愛する兄が先に結婚しました
「桜太って家帰ってんの?」


突然、友達にそんなことを聞かれた。


「は?帰ってねぇけど」


「だよなー。俺さ、この前久しぶりに帰ったんだけど……。

そしたらさ、姉貴にガキができてたんだよ」


「へー」


「マジでビックリ。あんなくそ姉貴にガキができるなんて」


「そんで?」


「だからどうこうってわけじゃねぇけど……。なんだろうな。

俺の世界って狭いな、ってふと思っちまったんだよ」


「なに、柄にもねぇこと言ってんだよ」


「ははっ、だよな……。

そういや、桜太ん家にもガキいるんだろ?」


「ああ……」


「名前なんて言うの?」


「さー、覚えてねぇ」


「名前くらい覚えてやれよ」



覚えてないってのは嘘で、わざわざ思い出すことはしないけど覚えてる。


結咲。


初めて会った日、再婚相手に言われた。


『桜太くんが“桜”で、結咲が“咲く”』


まるで示し合わせたような名前。

だから、なんとなく覚えていた。



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