天使と悪魔とお嬢様
その男性達は、見たこともないような美しい男性二人だ。
黒のスーツが恐いほど似合っている。
アニメの世界から出てきてしまったのではないかと思うほどだ。
その二人は、私に向かって微笑みを浮かべる。
「…恵美様ですよね。お待ちしておりました。」
「-------------っはぁ?」
二人は私の両側に立ち、私を持ち上げようとする。
ジタバタと暴れてもお構いなしだ。
そして、近くに止められていた黒くて大きな車に乗せられた。
いや、乗せられたというよりは、押し込まれた。
この方が正しい説明かもしれない。
(…な…なにこれ…新しい手口の誘拐?)
「ギャー!!!助けて!!!」
驚き過ぎて声を出すのも忘れていた。
私が暴れて大騒ぎをしても、二人はクスクスと笑っている。
美しい顔がなぜか余計に恐怖を感じるのだ。
「…お嬢様、そんなに暴れないでください。お怪我しますよ…」
私がいくら暴れても、男性二人に押さえつけられては動けない…
私が暴れているうちに、車は大きなお屋敷に到着した。
車から降りると、品の良い女性が何故か涙を浮かべて立っていた。
ちょうど母親くらいの年齢のようだ。
その女性は私に近寄ると、私の両手を優しく握った。
「…恵美さん。会いたかったわ…」