天使と悪魔とお嬢様

部屋に戻ると、早乙女がハーブティーを用意してくれていた。

「恵美様、カモミールティーは安眠効果があるので、どうぞお召し上がりください。」

ティーサーバーからハーブティーをカップに注ぐと優しい香りが広がる。
まるでリンゴのような甘いフルーツの香がする。

「早乙女、教えて欲しいことがあるのだけど…」

「どのような事でしょうか?」

早乙女は、ティーサーバーをテーブルに置いた。

「私が幼稚園の頃、トラックに轢かれそうになったのだけど…助けてくれたの?」

早乙女は少し口角を上げる。

「さぁ、どうでしょうか?なぜそれをお知りになりたいのですか?」

「私を…ずっと見守ってくれていたの?」


早乙女はそれ以上何も話してはくれなかった。
ただ、優しい顔で微笑んだように見える。




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