天使と悪魔とお嬢様

家に着くと、早乙女が笑顔で迎えてくれた。
早乙女の顔を見ると、何故かホッとする。

「恵美様、お帰りなさいませ。海は如何でしたか?」

「---う---うん。楽しかったよ。」

早乙女が笑顔で頷いてくれると、心臓がドクンと鳴る。
佳代と電車の中で話をしたことを思い出してしまった。

「恵美様、顔が赤いですが、大丈夫ですか?」

「だ---だ---大丈夫です。」

早乙女は私の熱を確かめるように、私の額に自分の額を寄せた。

「-------ひやっ----」

思わず変な声が出てしまった。
早乙女は不思議な顔をしている。

「お疲れのようですね---お部屋でお休みください。後程、お茶をお持ちします。」

部屋に着くと、私は自分のベッドへ向けて勢いよくダイブした。

…ボスッ…

そしてバタバタと足をバタ足のように動かしていた。

「恵美様、まだ海で泳ぎ足りなかったのですか?」

振り返ると、早乙女がティーポットをトレーに乗せてクスクスと笑っている。

「…そ…そういう訳では…ないよ!急に入ってこないで!」

「それは失礼致しました。」

「ねぇ、早乙女と龍崎から見ると私は子供だと思うけど、二人は何歳なの?」

すると早乙女は大きく息を吐いた。

「お知りになりたいですか?」

「…うん。」


なぜか沈黙が続く…
そして早乙女は片眉を上げてニヤリと笑った。

「私はもう…千年は超えたところでしょうかね…」

「-----------------------っはぁ?」

早乙女は悪戯な表情をする。

「この人間の姿はちょうど30歳になったところですが…」


やはり早乙女も龍崎も人間ではないという現実だ。

それにしても長生きしすぎ…

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