天使と悪魔とお嬢様


親族パーティー当日


今日は着物での出席だ。
朝から、少し年配の女性が着付けの為に部屋にやって来た。

「恵美様、おはようございます。これから着付けを担当させていただく小宮です。よろしくお願い致します。」

「小宮さん、よろしくお願いいたします。」

小宮さんは柔らかい表情で微笑むと、テキパキと着付けの準備を始めた。
ちゃんと着付けをしてもらうのは、七五三以来だ。

肌襦袢を着て腰ひもをキュッと締める。
着物を着ると、背筋が伸びて、気持ちが引き締まってくる。

小宮さんは、最後の仕上げに帯の形や、襟元をキュッキュッと手直しする。

「恵美様、とてもお似合いです。これはあなたの御祖母様がお召しになったものです。」

その着物は華やかな扇と鼓が刺繍された、とても美しい着物だ。
今日は御祖母様も出席されるらしい。
着物姿を見て、どう思われるかも不安になる。

髪もアップに結い上げられた。
鏡を見ると、自分ではないようで恥ずかしくなる。


< 39 / 48 >

この作品をシェア

pagetop