DAY DREAM
12月のはじまり
『里芋煮えたらさようなら
あなたと僕はさようなら
かぼちゃが焦げたらさようなら
すべてまとめてさようなら』

彼の作った曲を聞いたのは、これが最初で最後だった。

二年か、三年か、それくらい前のこと。

別に彼が死んだとか私たちの交際が終わったとか、そういうわけではなくて、ただ単に聞かせてくれないから。

いやむしろ、聞かせてもらえたあの日が、奇跡のような日だったのだ。



「美味しいケーキに出会う確率は高い。素敵な仕事に出会う確率は低い。」

「違う。そもそもあなたと僕はケーキという食物が好きで、就職というものが嫌いなんでしょう。」

名前も知らない公園の滑り台の上、小さな体を寄せあって

二人はいつものように味気のない会話を繰り返す。

最終的に出す答えは

“明日になったら何かがかわる、明日になって考えよう”

じゃんけんに負けた私が、彼を後ろに積んで、チェーンの錆びた自転車を漕いだ。

何もかわらない明日をまた迎える。
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