LOVESS
「斗希が、好きだから」


私の口からその言葉が出た瞬間。


斗希が、ニヤリ、と笑うのが分かった。


その顔に、えっ?と思う。



「ほら、結衣、一度も俺の事好きだって言ってくれないから。
俺は言ってるのに」


斗希の言うように、私は今迄一度もその言葉を口に出した事がなかった。


それは…。


以前は、そう言った後の斗希の反応が怖かったからだけど。


最近は、恥ずかしいから。


「俺がどれだけ結衣にそう言っても、全然言ってくれないから」


斗希は、沢山私にその言葉をくれる。


好きだよ、って。


けど、斗希はそう言われて照れている私を見て、いつも楽しんでいる。



「斗希、どうしても我慢出来なかったら、言って。
私が手でしてあげる」


「え、せめて、口で」


そう、クスクスと笑っていて。


伸ばしたその手で、ICレコーダーの録音を止めた。


それには、先程の私の斗希に対する、好きの言葉も録音されただろう。


もしかして、この話し合いの真の目的は、私からその言葉を引き出す為?


「結衣、俺も好きだよ」


平然としてそう言っているように見えていたけど、
斗希も照れていたんだな。


自分は、そうやって録音されたくないんだ、って。


ずるい人。

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