オスの家政夫、拾いました。2.掃除のヤンキー編
丸一日をかけた大掃除は夜になってやっと一段落した。食事を終えると、成が自分のジャケットを手に取った。


「天気もいいし、散歩でも行かないか?」

「散歩?」

「そう、デザートは俺がおごってやる。コンビニのアイスで良ければ。そして…俺たちももうちょっとプライベートな話をしようぜ」


成の提案はなんだかデートに誘うような感じで、でもそれが嫌ではなかった。彩響も自分のジャケットを手に取った。


「良いよ、ハーゲンダッツ買ってくれる?」

「うわー高いもの選ぶねー。でも良いよ、買ってあげる」



気持ちいい夜風が頬に当たる。コンビニで買ったアイスを食べながら、二人は線路沿いを歩いた。いつも通勤で使っている道だけど、なんだか今日は特別に感じる。ヤンキー家政夫さんは彩響の隣でさっさと2つ目のアイスを開封した。ジロジロ見ていると、彼が聞いてきた。


「なんだ、だから2つにしとけって言ったのに」

「いや、アイスは一つで結構です。ハーゲンダッツ、ありがとう」

「どういたしまして」


成はそう言って、持っていたアイスバーを瞬殺した。すごい食べっぷりだな?と彩響が感心すると、成が明るい声で質問した。


「ーで、彩響はなにが好きなの?」

「え?どうしたの、いきなり」

「言ったじゃん、プライベートな話もしたいって。好きな食べ物はなに?趣味とかある?」


これは、合コンに出てきそうな質問だな…。彩響はアイスの残りを全部口の中に入れ、答えた。


「好きな食べ物は…ビーフシチューかな…」

「デミグラスソースのやつ?」

「そう」

「他は?趣味とかはある?」

「本読むことかな…。最近あまり読んでないけど」

「まあ、あれだけ仕事していると時間ないもんな。兄弟はいる?」

「いないよ、私だけ。…あなたは?兄弟いるの?」


多少わがままな部分もあるけど、こいつはとてもいい性格をしていると思う。だからふと気になった。こんな穏やかな性格を持った人は、どんな家庭で育ったのか。


「俺?俺、妹がいる。7歳年下で、今大学生」

「へえ…結構年離れているね」

「小学校の時、あいつのおむつ替えてあげたこと覚えてる。小さかったのに、いつの間にか大きくなってさ。最近彼氏できたっぽい」

「そう…ご両親は?」

「親父はサラリーマン。お袋は専業主婦。たまにレジのバイトとかしてる。ふたりともまあ普通の人たちだよ」

(その「普通」というのが最も珍しいんだよ)
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