音のないこの世界で
紙には「音楽関係」とだけ書いてカバンにしまい、今日は麗音や智や茜といつものように河川敷で会う約束をしたのですぐに家を出た。
「いやーすごいな。本当に偶然だなー」
ある雑誌を見ながら智が呟いた。その雑誌には、
『ある高校の文化祭で発見!会場を優しい音で覆い尽くした謎の少女!』
と書いてあった。もちろんこれは麗音の事だ。
先月発売された雑誌に掲載された。
今だから言うが、僕が雑誌を作っている関係者…佐藤さんを文化祭に招待したのだ。撮るかどうかの判断は委ねたけど。もちろんみんなには内緒だ。
「そーだね!偶然だね!たまたま雑誌関係者が私たちの文化祭に来てたなんて!いやー!それにしても麗音すごいね!」
麗音は「そなことないよ」と手を横に振っているが、あれは評価されるべき音だ。耳が聞こえない人がピアノを弾いてるのがすごいのではなく麗音の音がすごいのだ。
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