秘め恋ブルーム〜極甘CEOの蜜愛包囲網〜
けれど、同じクラスになったのを機に、ときどき声をかけられるようになった。


そして、ある秋の夕暮れどきに、ひょんなことからお互いの夢を語り合った。あの日のことは、今でも鮮明に覚えている。


淡い想いを抱えていた私が、彼にもっと惹かれていくまでは本当にあっという間で、気づけばしっかりとした恋情になっていた。
ただ、私は男子が苦手だったし、彼も女子が嫌いだともっぱらの噂で、告白もできないまま卒業式を迎えてしまった。


最後に会った日、『頑張れよ』と言ってくれた彼に、自分自身も精一杯の激励の言葉を送った。
大きくなりすぎた想いを、彼には決して悟られないように……。




あれから約九年。


彼とは、もう会うことはないかもしれないと思っていたのに……。


「今日からここが香月(こうづき)の家だ」


卒業式の日以来初めて再会した彼が、なぜか私の目の前で微笑んでいる。


あの頃と同じように優しい口調で、けれど月日を重ねた分だけ大人になった姿で。
九年前よりもずっと男性らしい色香を纏った笑みには、さっきまでときおり滲んでいた当時の面影は見出せない。


目の前にいるのは、十八歳だった彼――諏訪翔(すわしょう)くんじゃない。
二十七歳の、眉目秀麗な大人の男性だった――。

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