秘め恋ブルーム〜極甘CEOの蜜愛包囲網〜
動かなかった足は、なんとか役目を果たしてくれそうだ。
それでも、いつも通り機能してくれず、力を入れようとしても震えてしまう。


通行人に舌打ちをされ、ようやく邪魔になっていることに気づいて焦ったけれど、なかなか一歩が踏み出せなかった。


「……ごめん、香月。どうしても嫌だったら殴って」

「え? ……っ、諏訪くん⁉」


言うが早く、諏訪くんは私の体を抱き上げ、横抱きにして歩き出した。


「わ、私……自分で歩けるから……!」

「でも香月、震えてるだろ。変なことはしないから、ちょっとだけ我慢して」


彼の指摘で、初めて全身が震えていることを自覚する。
寒さのせいだと言い訳したいけれど、今夜は日中の気温を残しているように蒸し暑い。


胸の前で両手を握るようにすると、震えがわずかに治まった。


男性に触れられると、嫌悪感と恐怖心を抱くだけだと思っていた。
だって、いつもそうだったから。


けれど、今は嫌じゃないし、なぜかちっとも怖くない。


(知ってる人だから……?)


自分自身の感覚に戸惑いつつも、私は逞しい腕の中で大人しくしていることしかできなかった――。

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