秘め恋ブルーム〜極甘CEOの蜜愛包囲網〜
「ダメだね、私……。あの頃からからちっとも成長できてない……。さっきも、美容師だったときも、全然上手くあしらえなくて……」

「香月はなにも悪くないだろ。でも、それならなおさら追いかけてきてよかった。もし抜け出してこなかったら、香月のことを助けられなかったし」


そういえば、諏訪くんは飲み会を抜け出してきてくれたのだ。私はともかく、彼は『川本以外と会うのは久しぶりだ』と言っていたのに……。


諏訪くんが私を追いかけてきてくれた理由はわからないけれど、私のせいで抜け出したのなら申し訳ない。


「あの……諏訪くん、ごめんね。もしかして、私になにか用があったから抜け出してきたの? 私、みんなには黙って出てきちゃったから……」

「別にそういうわけじゃないよ。ただ、俺がもう少し香月と一緒にいたかっただけ」


さらりとそんな風に返されて、思わずたじろいでしまう。彼に他意はないだろうけれど、どう受け止めればいいのかわからなかった。


「香月、今は赤塚と住んでるんだって?」

「あ、うん。敦子から聞いたの?」

「ああ。香月が飲み会を抜け出したことも、赤塚が教えてくれたんだ」

「挨拶もしないで出てきちゃってごめんね。さっき、今は求職活動中ってことは話したでしょ? でも実は、住むところもなくて……。ゴールデンウィーク中に住んでたアパートで火事があって、部屋を出るしかなくなっちゃったの」


大家さんの話では、被害を受けた家電などは保険で賄えるものもあるらしい。ただ、どちらにしてもあのアパートはもう取り壊しが決まっている。

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