秘め恋ブルーム〜極甘CEOの蜜愛包囲網〜
恋愛のことはともかく、確かに諏訪くんは怖くない。きっと、高校時代に優しくしてもらったことと、飲み会の日に助けてもらったことが大きな理由だろう。


とはいえ、それだけで同居をするなんて考えられない。


もっとも、敦子の言う通り、荷物はすでにすべて運び込んでいる。彼が昨日のうちにレンタルスペースをもう一往復してくれることになり、私は言われるがまま受け入れてしまったのだ。


「それにほら、遠くの親類より再会した初恋の人、っていうか?」

「それを言うなら、『遠くの親類より近くの他人』でしょ」

「細かいことはいいの。とにかく、今は諏訪くんに甘えなよ。志乃、最近は平気そうにしてたけど、飲み会のときみたいに男に絡まれたらやっぱり体が竦むんでしょ?」

「……うん」

「だったらなおのこと、信頼できる人に傍にいてもらった方がいいよ。私は引っ越すし、もしそうじゃなくても女同士よりも防犯効果は高そうだもん」


彼女は「ね?」と首を傾げ、優しく瞳を緩めた。


「別にずっと一緒に住むわけじゃないし、家が広いならある程度プライバシーも守られるだろうし。そんなに気負わずに甘えて、お礼にご飯でも作ってあげれば?」


志乃は料理が得意じゃん、と言われて、ようやく私からも小さな笑みが零れる。


諏訪くんはただの同級生だからこそ、ここまで親切にしてもらうわけにはいかないと思うけれど、幾分か気持ちが軽くなった。


彼は今日、早く帰ってくると言っていた。敦子のアドバイス通り、夕食の支度をして待つことに決め、彼女の昼休みが終わる前にお礼を言って別れた。

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