秘め恋ブルーム〜極甘CEOの蜜愛包囲網〜
「同級生はまだ独身が多いけど、仕事の付き合いでは結婚式に行くことが多いんだ。なぜか引き出物がペアの食器ばかりでさ」


バームクーヘンの方がまだありがたいんだけど、と苦笑した諏訪くんは、ローテーブルに置いていたマグカップを手にした。


「これも先月末に出席した結婚式の引き出物だったな。最初は実家に持って帰ってたんだけど、母から『置く場所がないからもういらない』って言われてからは自分で使うようになったんだ。料理はあんまりしないから、食器にはこだわりもないし」


事実を知った今、羞恥でいっぱいになる。頬の熱はなかなか冷めなくて、それが余計に恥ずかしかった。


「これで安心した?」


一方で、彼はなぜか嬉しそうに唇の端を吊り上げていて、私に向けられている表情はなにか言いたげに見えて仕方がない。被害妄想かもしれないけれど……。


それに、気になってはいたものの、事実がわかって安心したかと言われればそういうことでもない気がする。
ただ、自分でも自分の気持ちがわからなくて、上手く答えられそうになかった。


そんなことも見透かされてしまいそうで、諏訪くんの顔をまともに見られない。彼がそれ以上はなにも言わずにいてくれたことが、せめてもの救いだった――。

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