秘め恋ブルーム〜極甘CEOの蜜愛包囲網〜
「なに言ってるの。諏訪くんは今や社長だし、きっと引く手数多だもん。いくら一緒に住んでるからって、私なんて眼中にないよ」

「そんなのわからないでしょ」

「そもそも私だよ? 恋愛どころか男性が苦手なのに、そういうことが起こるわけないじゃない。それに、こういうのって親切にしてくれてる諏訪くんに失礼だよ」

「親切ねぇ」


含みのある言い方をした彼女に、「親切だもん」と念押しをするように頷く。


「でも、志乃は諏訪くんとなら一緒に住めてるわけでしょ。それって、やっぱり特別だからじゃない?」

「確かに、平気なのは諏訪くんだけだよ。でも、それは諏訪くんのおかげなの」


カフェオレを飲む敦子に、視線だけで促される。


「諏訪くんって本当に優しいんだ。私を気遣ってちゃんと距離を保ってくれるし、会社では家みたいに話せないけど、公私ともにすごく心配してくれてるの」


ワッフルを口に運ぶ彼女の顔は、心なしか呆れているようにも見える。


「ご飯もいつも喜んでくれるし、最近は私のリハビリまでしてくれてるんだよ!」

「リハビリ?」


その単語に引っかかったらしく、敦子の眉が小さく寄せられる。


「うん。異性に慣れるように、諏訪くんが練習台になってくれてるの」

「……それって具体的にどんなことしてるの?」

「えっと……手を握ったり、諏訪くんが私の顔や頭に触れたり……」


諏訪くんとのリハビリが始まって、約二週間。
最初は五分程度から挑戦し、今では十分ほど手を握りながら彼に触れられている。その成果なのか、肩や手に触れられることへの抵抗感は弱まり、会社で男性社員に肩を叩かれても委縮しなくなった。

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