冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~


「よう、匠馬。お前、秘書に逃げられたらしいな」

澪がいなくなって二週間ほどたったある日。匠馬が社長室に戻っていると、景道とばったり出くわした。

「景道……」
「新しい秘書はつけてねーのかよ」

景道は今統括本部長という役職についている。だがいつものらりくらりしていて、真面目とはいいがたい。ちゃらちゃらと高そうな装飾品をつけ、高級車を乗り回しているらしい。それに自分の立場を利用し、女性社員を食い散らかしているという噂もある。

とにかく昔からわがままで、自分が優位じゃないと気がすまないタイプだった。匠馬と同い年ということもあり、親戚の集まりなどでは必ず顔を合わせたが、匠馬は景道が昔から嫌いだった。景道もまた同じ。

「喜べ。お前の退任はすぐそこだ」
「お前なんかに渡さない」
「相変わらず強気だな。さっさとあのネクストファーマのお嬢さんと結婚したほうがいいんじゃねーの? そしたらお偉いさんたちも株主も納得するだろ」

大口を開けケラケラと笑っている。あのひょろひょろの体型に、ボディーブローをかましてやりたい。あの蛇のような目もいけすかない。




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