冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~


「なんの取り柄もありませんが、社長に認めてもらえるよう尽力いたします」

力説していると、匠馬が呆れたように鼻で笑った。そんな匠馬を澪はキョトンと見上げる。

「まぁ、とりあえずはそれでいいか」
「とりあえず……?」
「とにかく、俺はお前を手放す気はない。それだけは覚えておけ」

射抜いてしまいそうな力強さで澪に言い放つと、匠馬は再び歩き出した。

(つまり、少しは認めてくれたということだろうか?)

そう思うと、嬉しかった。

『君がいてくれてよかった』と、最初に掲げた目標に一歩近づけたようで胸が躍った。

これから先、何があっても匠馬についていこうと、颯爽と歩いてく背中に誓う。

芽生え始めた恋心を、心の奥にしまうことも同時に――


< 44 / 158 >

この作品をシェア

pagetop