冷徹御曹司の最愛を宿す~懐妊秘書は独占本能に絡めとられて~


非道なことをする人がいたものだ。そういった場合、ホテル側の損失は大きい。用意した料理など全て破棄しないといけなくなる。

「同一人物の可能性も高いと睨んでる」
「あの、差し出がましいようですが、まさか林田さんという可能性は……」
「もちろん一番に疑った。ただ証拠がない」

あのとき誠はプライドを傷つけられかなり怒っていた。

反逆に出る可能性は大いにあるだろう。それにもし誠のせいなら、自分に責任があると澪は思っていた。

「言っておくが、例えあの男が犯人だったとしても、お前のせいじゃない」
「ですが」
「責任を感じる必要はない。わかったな」

強い口調で言われ、頷く以外見つからなかった。

秘書室に戻ると、デスクで思わずため息を吐く。何か自分にできることはないだろうかと考えていたのだ。

「あら、どうしたの、ため息なんて珍しいわね」

その声に顔を上げると、外出先から戻ってきた室長の一花だった。

「赤羽さん、お疲れ様です」
「そうだ、これさっき専務と行ったお店でお土産にもらったの。食べない?」


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