影がいるから私がいる
不可避なる運命
私とりっちゃんは手を繋いで村へと向かっていた。


私達が住んでいる村は藍那(あいな)。
沙楽の中にある村の一つ。

藍那には昔からある風習・慣習が重んじられる村なんだ。

私の家系は代々、藍那の村長を務めてきたから余計に煩く言われてきた。
やれ慎ましくしなさいとか礼儀作法を覚えなさいとかね…。
昔から家を抜け出しては、りっちゃんと一緒に遊んだりしたなぁ~。


私がニヤニヤしていると、りっちゃんが不思議そうに尋ねてきた。


「どうしたんだ?ニヤニヤしちゃって。」


「昔家を抜け出しては一緒に遊んだな~って。」

するとりっちゃんが少し沈んだ表情を見せた。


「あー…村長にも挨拶しないとマズいよなー…」

あー、なるほど…。
りっちゃんの表情が沈むのも分かるな~。
藍那の現村長は私のお父さん…厳しくて、怖いんだ~。

昔家を抜け出して遊んで、家に帰ったら二人してこっぴどく叱られたんだよね~。

お母さんは私が物心つく前に死んじゃったみたい…そういえばりっちゃんのご両親は、お父さんが小さい頃に亡くなってしまったらしい…。

互いに片親が居ないっていうのは、不思議な共通点だな~。
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