【完】華道家の若旦那は、ウブな彼女を離したくない。
◇わたしの過去


「……美味しい」


 貴敬さんは、夕食に肉じゃがを作ってくれて今は二人で食べている。


「よかった」

「貴敬さん、さっきはごめんなさい……」


 一度箸を置いて、私は頭を下げた。


「頭上げて。俺は気にしていないから、大丈夫」

「ありがとうございます、貴敬さん。ご飯が終わったら話したい、です」

「じゃあ、今日もらったクッキーをお供に紅茶でも飲みながら話をしよう」


 優しく微笑んでそう言った彼は「冷めちゃうから食べよ」と言って私に食べるように促した。私は、頷くと肉じゃがを再び食べ始めた。

 お出汁と調味料の味付けが本当に美味しい。じゃがいもはホクホクしているし……本当に彼は料理上手だ。

< 56 / 64 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop