陰キャの渡瀬くんは私だけに甘く咬みつく

陽呂side



 ……やってしまった……。

 いや、別に後悔はしてない。

 ずっと、美夜は俺のだって印をつけてみたいって思ってたから。


 しなかったのはいつも美夜がダメって言うからだ。

 でも今日のは……美夜が、告白なんかされるから……。


 昼休み、無駄に大きい弁当をなんとか完食したところだった。

 腹苦しいし、授業まで昼寝でもするかと思って机に突っ伏していたところ。


 美夜の方に誰かが近づく気配がして少し顔を上げると、見覚えのある男だった。

 確か中学が同じだった気がする。
 名前は覚えてないけど。


 そいつは球技大会がどうとか言ってなかなか本題に入らない。

 見ているだけでイライラしてくる。


 男が美夜に近づくんじゃねーよ用件言って早く帰りやがれ!

 そう思っていたのにまさかの告白だ。

 ホンットに、ふざけんな。


 驚きと怒りを抑えるために座ったまま耐えていると、美夜はちらっと俺のことを見て寂しそうに視線を元の場所に戻した。

 なんだよ、他の男なんて見るなよ。

 そう思ったらもう抑えが効かなくて、立ち上がって美夜を連れ出していた。


 保健室に向かいながら色々考えてしまう。
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