冷徹な恋愛小説家はウブな新妻を溺愛する。
あれだけ強く掴まれていた肩が突然フッと軽くなって、わたしはバランスを崩してその場にふにゃっと崩れた。
そして、変な姿勢なままバッと顔だけを上げる。
そして、わたしを捕らえていたチンピラが誰かに殴られて宙を舞ったところを目の当たりにした。
残りの2人のチンピラは顔色を青くして急いで車を発進させて脱兎の如くこの場から逃げて行った。
残されたのは、その場にへたりこんでいるわたしだけ。
チンピラを殴った人はわたしをその目に捉え、ゆっくりと近付いてくる。
外見はとても美しく、品と色気を纏った大人の男性だった。
艶のある髪は整髪料でザッと後ろに流していて、ネイビーのスリーピースのスーツをスタイル良く着こなし、人を殴ったのが嘘みたいに何も乱れてはなかった。
近付いてくるにつれ、その男性の顔もハッキリしてくる。
キリリとした形の良い少し彫りの深い瞳に高い鼻。薄くキュッとした唇が少し動いた。
…何か言っている?
恐怖心を忘れてただただ呆然としているわたしは聞き取ることが出来ない。
すると男性はわたしの目の前まで来て、スッとわたしと目線が合うように腰をおろしてくれた。
そこで「あ、」と気付く。
もしかしてこの人、結構年上の方なのかな。と。
でも、歳を重ねているからこそのこの色気なのかとも思った。