相思相愛マリアージュ(前)~君さえいればそれでいい、二人に家族計画は不要です~
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「これが出生前検査の結果です…」
ハイリスク妊娠の専門外来となり、出生前検査を受ける妊婦は少なくない。

稲城夫婦もその一組。

奥さんは今年四十歳となる初産婦。
不妊治療を五年続け、ようやく体外受精で授かった子供。
夫婦と共に出生前検査の結果に愕然としていた。

俺は産科医として夫婦に寄り添えるのは赤ちゃんが誕生するまでの話。
赤ちゃんを育てていくのは目の前に居るパパとママ。

「槇村先生、嘘だと言って下さい!!この子を授かるのに…僕たちは五年も費やしたんですよ!!」

「それは…」

奥さんのお腹の中に宿った胎児には障害があった。

「申し訳ありません・・・これが検査結果です・・・稲城さん」

俺の口調も重くなる。

週数は十三週目。

「この結果を見て…どう判断するかはお二人に委ねます・・・」

出生前検査の結果で、中絶を選択する夫婦も居る。

この世界に産声を上げる事無く、闇に葬り去られる小さな命。

五年もかけてようやく目の前の夫婦に舞い降りた天使なのに。

――――この二人は中絶を選択した・・・







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