相思相愛マリアージュ(前)~君さえいればそれでいい、二人に家族計画は不要です~
あれから三日経つと言うのに、奏弥さんは不機嫌なまま。

いつまで、怒ってるつもりだろうか?
そりゃ確かに彼の言う通り人体実験かもしれない。

でも、私達の協力が今後の研究に生かされるなら、それはそれで悔いは残らないと思う。

成功すれば、私と同じように生殖機能を失った人達に希望を与えられるのに。

やはり、白石夫妻のコトも奏弥さんの頭の隅にあるのかもしれない。

「これ…新生児科の皆で分けて…」
私達の挙式披露宴には参列してくれたが、体調不良で休んでいた奏弥さんと同じ産科医で従妹の白石由夢(シライシユメ)さんが復帰して来た。
彼女の叔母は『槇村レディースクリニック』副院長を務めている。母親の居ない奏弥さんは由夢さんの母親に育てられたよう。だから、二人は従妹と言うよりも、兄と妹のような関係を醸し出していた。
「由夢さん…もう大丈夫なんですか?」

「うん…」

由夢さんは私に休んで迷惑を掛けたとお詫びにと、菓子折りを持って来た。

「別に・・・いいのに」

「いいから…分けて、遥」

「分かった…」

由夢は私と由夢さん、そしてご主人の呼吸器内科の白石幸人(シライシユキト)さんは共に東亜医科大で学んだ同期。


由夢と幸人さんは在学中に結婚。

二人で結婚生活をしながら医者になった頑張り屋さんたち。

研修医時代を終え、子作りに励んでいたけど、幸人さんは無精子症で、体外受精でないと子供を授かれないと言われ、二度体外受精に挑戦した。
でも、二度とも流産。
二度目の流産でカラダと心に支障を来して、休職していた。




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