年下男子に追いかけられて極甘求婚されています
好きって言ってなかったっけ?
曖昧な関係を続けて一年ちょっと。
その間、何度か合コンじみた飲み会に誘われ参加するもそこで運命的な出会いがあるわけでもなく、結局私は潤くんに囚われたまま新しい彼氏をつくることはなかった。

それがいいのか悪いのかはわからない。そして程なくして潤くんも無事大学を卒業した。

ロンドンで会って以来、私たちは直接会ってはいない。潤くんは学業のみならず精力的に松風で働いていたため、必然的に祝日や連休はアルバイトをしていた。だから地元に帰ってくる余裕がなかったようだ。

かといって付き合っているわけではないからあえて私から会いに行くこともしなかった。ちょうど私も社内で大きな職制改正があって忙しかったし、新しい仕事でへばっていたからだ。

でも、もしもその時“会いに来てほしい”なんて言われたら、私はノコノコと会いに行ってしまったかもしれない。

それくらい、私は潤くんのことを気にしている。

『正式に跡取りとして働きだしたよ』

そう潤くんから連絡があったのは四月のこと。京都から地元に戻って富田屋の近くで一人暮らしを始めたと近況報告があったのだ。だけどそれだけで、”会おう”とは言われなかった。
< 55 / 117 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop