君の言葉で話したい。
4話 中国語
「最近は外国人のお客さんも、
来るようになったね。」
マスターが鈴に微笑みかける。
話好きのマスターは、
お客さんが少なくなると、
時々、こうして話題を、
提供してくるのだった。

「そうですね。」
「英語メニューも用意した方が、
いいかなぁ。相原さん、
英語得意?」
期待しないでくださいよと、
やんわりと否定すると、
マスターはそうかあと、
肩を落とした。

確かに連日、外国人客が増えている気がする。この店の雰囲気が英国風だからなのか、
親近感があるのかもしれない。

日本語メニューがわからずに、
困っている外国人客がきた時に、
ふと、雨泽を思い出した。

彼は元気にしているだろうか。
必死に日本語で告白してくれた彼に、
一度も歩み寄ってあげることが、
できなかった。
 
少しくらい中国語ができれば、
研修中、
あれほどまでに心を閉ざすことが、
無かったのかもしれない。
そう思うと、少し後悔した。

そんな矢先、
マスターが初の試みとして、
外国人スタッフを入れたいと言い出した。

「外国人スタッフがいれば、
その国のお客さんがきた時に、
対応してあげられると思うし、
客層も広がると思うんだよね。」

思い立ったらすぐ行動する性分の彼は、
有言実行して、
一ヶ月も立たないうちに、
日本在住海外国籍のスタッフを何名か、
採用したのだった。
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