君の言葉で話したい。
6話 好きな人
紫涵に、好きな人に会って欲しいと言われた。

友人の好きな相手に会うのは、
何となく気が引ける。
無用なトラブルを避けるため、
何度か断っていたが、
どうしてもと紫涵が譲らなかったため、
渋々会うことになった。

引き出しの手前に入れている、
ベージュ色のアイシャドウで、
メイクをする。
琥珀色の化粧品は邪魔だったので、
奥に押し込んで、
家を出た。

待ち合わせ場所に向かうと、

紫涵と雨泽が並んで立っていた。
「相原さん?」
「どういうこと…。宗くん?」
「えっ、2人は知り合いなの?」
話が複雑になりそうで、
鈴は踵を返した。

「鈴、何故帰ろうとするの」
この人が私の好きな人だよ、
紫函は耳打ちした。
「私、まだ彼氏いるから!」
鈴はわざとらしく大声で叫ぶ。
紫函は訳がわからない様子で、
そんなこと言わなくてもわかってるよ、
と迷惑そうに眉間に皺を寄せた。

< 25 / 54 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop