君の言葉で話したい。
事なかれ主義の鈴が、
勤務中に声を荒げたのは、
初めてだった。

この状況が、
どうしても我慢ならなかったのだ。

「何よ。」
「今のお言葉、撤回してください。
それができないのなら、
二度とここに来ないで下さい。」
「は?」

周囲がどよめいたのがわかる。
慣れないことをしたせいか、
足がすくんだ。

「私は客なのよ!何よ、その態度!
信じられない!」
「スタッフを虐めるお客様は、
来て頂かなくて結構です。
どうぞお引き取りください。」

女性は上の者を呼べだの、
こんな店二度と来ないだの、
癇癪を起こし、
最後は買ったばかりの、
卵のパックを、
勢いよく開けると、

中身を鈴に向けて、
感情の赴くままに、
投げつけてきた。

生卵特有の嫌なにおいが、
エプロン一面に広がる。
ふと女性から視線を外すと、
雨泽が鼻を啜っているのが、
目に入った。


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