俺がお前を夢の舞台へ

違和感-蒼空side-

【蒼空side】

「あぁっ!くっそ…」


手からすっぽ抜けて変な方向に飛ぶ球を見るのは何度目だろうか。


少なくとも、今夜だけで5度は見ている。


「落ち着けよ蒼空。落ち着けないんなら、今日の練習はもうやめたほうがいい」


彩絢の父親…監督が俺にスポーツドリンクを渡してくれる。


「…あざす」


今日のOB戦は悲惨だった。


それだけじゃなく、試合後勇翔に、サインが見えてなかったことや、ありえない捕球ミスがあったことを指摘されたことが余計に俺を苛立たせていた。


アイツは何も分かってない。


何の理由があって野球を辞めたのかは知らないけど、簡単に夢を捨てる男だ。


お互いこんな性格だから口に出して言うことはなかったけど、

“二人で甲子園に行く”
“彩絢も連れて3人で行きたい”

この思いは同じだと思っていた。
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